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2016年6月1日水曜日

漫画レビュー:ヒメゴト~十九歳の制服~、電波の城


 2016年6月の期間限定無料マンガより、とても人には言えない「服」の性癖を描いた名作峰浪りょう「ヒメゴト~十九歳の制服~」(1~3巻)の感想です。

 放送業界の闇……というか、放送業界に挑むある女の闇を描いた細野不二彦「電波の城」▼感想を追記。

*■前のレビュー(ガンダムUC#11「不死鳥狩り」※小説) ■次のレビュー(ハンターハンター33巻)

HIME-GOTO: uniforms at the age of nineteen

◇ずっと、永遠に、秘密だけど。

漫画レビュー:峰浪りょう「ヒメゴト~十九歳の制服~」
2016年6月9日までの限定公開)

 以前の1~3巻無料配信で読み、あまりにも気になったので珍しく最後まで買って読んだ作品。
 題材的に人を選びますが非常によくできた名作でした。
 元はオンライン漫画の◆モバMANで連載されていた作品で、わりと有名な「ノ・ゾ・キ・ア・ナ」”陽”とすると、「ヒメゴト」”陰”といった感じでしょうか。

 ちなみにモバMANのトップページでは「名作」コーナーの一番目立つとこに据えられていたりして、その貢献度が伺えます。

(右上のは同氏の前作「溺れる花火」全2巻)

 メインキャラの三人は、すでに高校生ではなくなった19才。
 もう必要ないはずの「制服」や、女の子の「かわいい服」にそれぞれが違った形で執着を持っています。
 いずれも倒錯した性癖「秘め事」として抱えており、「少女」でいられるロスタイムのような年齢に焦りを感じつつ、それを受け入れられず危うい行動を続ける様子はかなりドロドロしています。
 本当は誰かに相談したいはずなのに、最も信頼できる相手にすら嘘を重ねてしまう心理描写は見事。


 本作の醍醐味は「腹の探り合い」で、自分の本当の秘密だけは隠したまま互いの出方を見るような展開です。
 話の中では、もうこれだけは絶対に見られたくない……というところを偶然見られてしまうシーンが幾度もあり、そのたびに「秘め事」が徐々に共有されていきます。
 秘密を知られたことで一気に仲良くなって、それでも最後の砦のような部分だけは隠したりするものだから、どんどんが重なっていきます。
 あと、当初からぶっ壊れている「未果子」が徐々に暴走レベルを増してさらに話がねじれていくあたりも非常に読ませるものがあります。

 絵柄についてもハイレベルで、あらゆる喜怒哀楽を的確に描いている印象があります。
 やはりキーとなるのは「服」なのですが、男っぽい主人公のお着替えでまっっったく似合ってない感じや、神がかったセレクトでいきなり美少女が爆誕したりする描き分けも必見。
(各話の扉絵の、あり得たかもしれない日常がまたじわじわ来る)
 なおテーマ上エロも多めではありますが、展開的に必要な分という感じなのでそこは目当てにしないほうがいいでしょう。(結構エグいし)


 改めて読み返してみると、難解な話というわけでもないのですが、各キャラの「この時点ではこの情報を知らない」「こうだと勘違いしている」という思考/行動の変化が実に緻密で、構想の時点で相当に作りこんだ物語であろうと思います。
 複雑に思惑が絡み合って明るかったり重苦しかったりする物語ですが、第8巻ではこれでもかというくらい完璧な終わり方にたどり着くということも含めておすすめできる一作です。


(蛇足)
 で、作者は現在少年サンデー本誌にて「初恋ゾンビ」を連載中。
  →公式:http://websunday.net/rensai/hatukoi/
hatukoi じゃなくて hatsukoi だろいい加減にしろ)
 今回の無料配信で知ったのですが「ノ・ゾ・キ・ア・ナ」の作者も「ノゾxキミ」を本誌で連載していたので、モバMANで結果を出すと本誌連載がゲットできるようなルールでもあるんでしょうか。
(この2つは特例かなあ)

 まあ正直なところ、個人的には「ヒメゴト」のように痛くて辛くてドロドロした青年向けのガチな話が見たいので「峰浪りょうの無駄遣い」という気もします……が、そんな話ばっかだと病みそうだなとか、「本誌連載作家」という最前線でいる今を応援したい気持ちもあってなんだか複雑なところです。

(追記)そんなわけで、ハンターハンター33巻と一緒に1巻を買ってきました。

(レビューはそのうち)


(備考)
 いろいろページを確認していたら、まさに上記の人気2作の価格改定(※値上げ)があるとのこと。
  →正確には、モバMAN全体で改定があったみたい。
 https://csbs.shogakukan.co.jp/mm/mminfo2
小学館「ヒメゴト」「ノゾキアナ」の値上げ(電子版)

(記載内容)
『ヒメゴト~十九歳の制服~』『ノ・ゾ・キ・ア・ナ』2016年6月1日から新価格での販売を予定しています。
5月27日時点価格:432円(税込)→ 6月1日以降価格:540円(税込)

 いま現在(6/1)、すでに表記の価格になっていました。
 くっ、足元見やがって……!
  ※作品に罪は無いよ!

 なお紙媒体向けでは全6巻予定の廉価版も刊行中です。(コンビニ本みたいな感じかな?)
  →◆ヒメゴト My First Big SPECIAL
 これ……リニューアル自体は良いことですが、絶対にを追って読むべき緻密な展開なのに、「焦」だの「蕾」だのとナンバリング表記を付けないクソオサレ仕様とかマジで何考えてんだいい加減にしろと思いました。
  ※作品に罪は無いよ!
(追記)発売日的に罰→蕾→焦→涙→喘→解の順のようです。


ヒメゴト~十九歳の制服~(ビッグコミックス)


Castle of Broadcast

◇邪悪なサクセス・ストーリー

漫画レビュー:細野不二彦「電波の城」
2016年6月13日までの限定公開)

 表紙の時点で「おっ?」と思う雰囲気もあって無料配信分を読み始めたところ、予想していたものとはほど遠く「黒い」話で非常に自分好みでした。
 正直、作者の細野不二彦氏というと「ギャラリーフェイク」のイメージしか無く、本作も「放送業界で一生懸命がんばるぞい」的な人間味あふれる業界ドラマって感じかな? と思っていました。
(↑まあ間違ってはいないが……)

 実際のところ「電波の城」は人間ドラマとかいう生易しいものではなく、「サスペンス」と言ったほうが正確です。
 話としてはピカレスクで、情け容赦の無い主人公が手段を選ばず成り上がるサクセス・ストーリーといったところ。
 とにかく主人公のタチの悪さは人類には早過ぎるレベルで、ドス黒い野心で一切迷うことなく他人を蹴落としていきます。
 絶対関わっちゃいけない系の人間ながら、そうとは知らずに敵意を燃やしてくるライバル達を逆に丸呑みにしていく様子は不気味であり、しかし爽快でもあります。
 
 
 突出しているのが、主人公:天宮詩織(あまみや・しお)の描き方。
 気に入らないことがあった時の「ぷるるるるるるー」とか、罪悪感というものが欠落しているかのような描写には「凄み」を感じます。
 しかし「外ヅラは女神のようなお嬢様」というのが徹底しているため、ゲスい悪だくみの最中でも天使のような微笑みを崩さないのがなかなかにシュールでした。
 
 この「天宮詩織」は、他人から見ると日常生活や会話、趣味嗜好などには何もおかしなところが無く、むしろたいへん立派で魅力的な人間に見えてしまいます。
 しかし、ある部分では異様な、非人間的な言動や行動が見られる。
 常識や自制心を備えているのに、目的に関してだけは優先順位から倫理がスッポ抜けている。
 以前、現実に存在するこういう人間を書いた本を読んだんですが……たぶん天宮詩織を表現する言葉は「クズ」でも「サイコパス」でも「異常者」でもなく、「邪悪」が適切でしょう。
 
 と、そんなわけで思いもよらないドロドロ感がとても気に入ったわけですが、今回一緒に配信されている同氏の過去作「太郎」とかと比べるとあまりにもカラーが違いすぎて、何度も作者名を確認したほどでした。
 自分が知らないだけで、衝撃を受けるような漫画はまだまだそこら中にあるのだなと反省しつつ、改めて無料配信本ってありがたいなと思った次第です。


電波の城(ビッグコミックス)(Kindle)


 以上です。ではまた。

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 マンガレビューの過去記事は■「漫画レビュー」ラベル」にて。

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